来年の大相撲初場所(1月10日初日、東京・両国国技館)を、在位4場所目で初のかど番として迎える大関朝乃山(26=高砂)が10日、相撲を取る稽古を再開した。

11月場所は、右肩三角筋挫傷で3日目から休場。治療やリハビリで順調に回復し、8日には早ければ今週末から再開する意向を示唆。さらに前日9日に病院で診察し「明日(10日)から(稽古で相撲を)取ろうかな(と思っている)」と話していた通り、11月場所2日目(11月9日=小結照ノ富士戦)以来、約1カ月ぶりに土俵に入り相撲を取った。

稽古場に下り約1時間半は四股、すり足、てっぽうといった相撲の基礎運動のほか、ゴムチューブやダンベル、サンドバッグを使ってのトレーニング、さらに若い衆にぶつかり稽古で胸を出すなど、たっぷり汗を流した。満を持して東幕下12枚目の村田(26=東幕下12枚目)と対峙(たいじ)。実戦から遠ざかったせいか「急いでやってバタバタして滑った」と振り返ったように、いきなり足を滑らせ引き落とされた。

だが以降は村田、深井(23=東幕下12枚目)、朝玉勢(27=西幕下27枚目)、寺沢(25=西幕下4枚目)と大卒幕下勢4人に、格の違いを見せるように9連勝。合計10番取った後は、ぶつかり稽古、四股、サンドバッグを持ってのすり足などで汗を流し、約2時間の稽古を切り上げた。立ち合いで痛めた右肩付近から相手に当たるなど、ケガの不安を感じさせない取り口に、8代目を受け継いだ師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)も「肩の痛みは取れている。徐々に、1日1日と思います」と静かに見守った。

朝乃山自身も「番数は少ないけど肩とか足の運び、形とかを確認しながらやりました。そこまで(体力など)落ちていないし相手も幕下。体を作って(18日からの)合同稽古に行く感じにしたい」と冷静。肩の痛みは「ちょっと気になった。“うっ”と。“うわーっ”という激痛ではない。(右を)差した時にピリッと(という感じ)。慣れないといけないかな、と思います」と、微妙な感覚の違いを丁寧に説明した。

身上とする右四つの形についても言及。相撲を取る前は「肩をケガして、やった時の痛み、恐怖が脳にロックされている。どうなるかな…と思った」と正直に吐露。相撲を取った後の感触は「今日、取っている限り、攻めを急がず、確認しながら(取った)。出られるところは出たり、残るところは残って、引きつけ(るところ)は引きつけて」とVTRを巻き戻すように振り返った。

回復を期待するのは、フィジカル面だけでなく、まわしの取り方、差し方など技術面も同じ。それは朝乃山本人も承知しているようで、1番1番を「浅く取ったら引きつけて相手を逃さず、横に逃げないように引きつけて(相手を)正面に置いて」と確認しながらの取り口。自らの悪癖も「深く差す時は…。そこは悪い癖なんで、立ち合いから浅く取る意識でやっています」と話すなど、目的意識を明確にして臨んだ土俵だった。

今後も「相撲を取って体に覚えていかせたい」と、幕下相手の稽古を続ける。合間に診察にも行くが「痛みが出ないようにするには、稽古するしかない。肩を強くさせたいなら筋トレでカバーできるかも」と強靱(きょうじん)な肉体を作り上げていく。「もう1歩、上の番付を目指すには下の番付の関取には負けられない。一番は横綱に勝ってこそ、横綱の番付も見えてくる。勝たないと上の番付を目指せない」。休場中の両横綱との対戦も熱望した。