大相撲初場所が10日、東京・両国国技館で初日を迎えた。新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、厳重な対策を講じ5000人を上限に観客を入れての興行。本場所直前に約900人を対象に実施した新型コロナウイルスのPCR検査の結果、力士65人を含む協会員83人が休場する中、幕を開けた。

白鵬(35=宮城野)、鶴竜(35=陸奥)の両横綱も休場で3場所連続で横綱不在。今後、協会員に感染者が出た場合、日本相撲協会は「部屋封鎖」も視野に入れるなど厳戒態勢。綱とりに挑む大関貴景勝に土がつくなど、混沌(こんとん)とした場所を象徴する初日となった。

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その日の十両以上の取組を知らせる会場内の電光掲示板。右端から取組順にしこ名が並ぶ中、左端には休場する関取16人のしこ名がズラリと並んだ。腰痛で休場した鶴竜を除き、15人が新型コロナ感染及び濃厚接触にあたるとして休場を余儀なくされた。十両土俵入りに参加したのは28人中わずか19人。本来なら土俵上に、ずらりと力士が並ぶが、目立ったのは力士同士の間隔の広さ。感染予防対策にソーシャルディスタンス(社会的距離)は大事だが、予期せぬ大きなスペースが、緊急事態を物語っていた。

土俵上の寂しさは否めない。それでも、観客の入りはこれまでの場所と大差なかった。1日あたりの観客数の上限を5000人としての開催。東京は緊急事態宣言下だが、入場可能な午後1時になると多くのファンが会場入りした。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「相撲博物館の館長にあいさつに行った時、博物館の前からずら~って、売店にお客さんが並んでいた。密にならないようにはしないといけない。ただ、こんな中でも来ていただいてありがたいこと」と感謝した。

大勢の休場者を出しながらも開催に踏み切ったからこそ、厳しい対応を視野に入れる。芝田山広報部長は「体調不良者が出れば即刻検査して、万が一、感染者が出たら部屋を封鎖する手だてをして、乗り越えていかないといけない」と説明。すでに協会は、直近で感染者が出た4部屋の全力士の休場を決めるなど徹底した感染対策をとっている。感染がさらに広がれば、無観客や中止の可能性もあるなど柔軟に対応していく。

十両取組途中に行われた協会あいさつでは、八角理事長(元横綱北勝海)が「力士は切磋琢磨(せっさたくま)し、今年初めての場所で力を発揮するよう努力してまいりました。世界中に感動を届けられるよう努力します」と力強く宣言した。新型コロナと隣り合わせの日々が続くが、角界は一丸となって15日間を戦い抜くつもりだ。【佐々木隆史】

▽照ノ富士 いろいろ大変な時期。場所があるか分からない状態で調整していた。無事に15日間終われればと思う。(土俵入りでは)休場力士が多いが仕方ないこと。出場している力士で盛り上げられれば。

▽徳勝龍 出られるだけありがたい。出られない人の分までとかではないが、自分は出られているので、その分しっかりやらないと。

▽豊山 こういう状況下でも見にきてくれる人のためにいい相撲を見せたい。その思いを忘れずやりたい。