西前頭筆頭大栄翔(27=追手風)が、三役以上総ナメに王手をかけた。関脇照ノ富士を押し出しで破り、無傷の6勝目。7日目に関脇隆の勝を破れば、休場している2横綱を除く三役以上総ナメとなる。

出身の埼玉県勢初の幕内優勝に向けて弾みをつける殊勲星を狙う。再入幕の明瀬山も初日から6連勝とし、勝ちっ放しは2人だけとなった。かど番脱出を目指す大関正代は5勝目を挙げ、大関朝乃山は3敗目を喫した。

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圧巻の相撲内容を大栄翔が見せつけた。馬力のある照ノ富士に、激しく当たられた立ち合い。負けじと激しくぶつかり、懸命に伸ばした左ののど輪で相手の上体を起こした。強烈な突き押しで大関経験者を押し込み、追い込んだ土俵際。右に逃げられたが、すかさず反応。足を運び、休まずに突き押しで攻め立てた。まわしを与える隙を一切見せずに完勝し「自分の相撲を取りきることが大事。120%を出そうと考えていた」と出し切った。

快進撃はとどまることを知らない。初日からの3大関撃破で勢いに乗ると、次々と役力士を撃破。気が付けば三役以上との対戦は、7日目の隆の勝戦だけとなった。休場している白鵬と鶴竜の2横綱を除く、三役以上の総ナメに王手。「今日もまた自信になる相撲になった。(7日目は)気持ち良くいけると思う。体も心も調子良くいきたい」と準備は万全だ。

大関朝乃山と同学年の27歳。昨年に1つ殻を破った。小結だった7月場所で11勝を挙げ、9月の秋場所で新関脇に昇進。5勝と壁にぶつかり、場所後の10月に右肘軟骨除去手術を受けて突き押しの形を見直した。そして、11月場所でこの年2度目の2桁白星となる10勝。場所を重ねるごとに右肘の状態も良くなり、突き押しにも磨きがかかってきたという。「腕が右、左、右、左と交互に出ている。足も出ているので体全体で押せている」と納得の突き押しで白星を重ねてきた。

序盤戦から上位陣が星を落とす中、三役復帰を狙う大栄翔が気を吐いている。本命不在となっているだけに、早くも優勝への期待が高まってくるが「まだまだ全然早い。1日1日集中するだけ」。自身に言い聞かせるように引き締めた。まずは三役以上総ナメで、優勝候補に躍り出る。【佐々木隆史】

▽八角理事長(元横綱北勝海) 大栄翔はここまで立ち合いが全て決まっていて最高じゃないか。絶対に押せると自信をつけている。明瀬山は謙虚に相撲を取って頑張っている。貴景勝は悪い時にどう力を出すかは気持ちの強さが必要で、精神的に粘り強く行かないとダメだ。