スポーツには力がある。懸命に戦うベテラン、いやおっさんたちからも力もらい、負けじとみんな頑張ろう-。新型コロナウイルス感染拡大という状況が続き、誰もが疲弊している。出口はまだ見えない。そんな中、21日、大相撲初場所(両国国技館)で現役最年長50歳、東序ノ口9枚目の華吹(はなかぜ、立浪)が勝ち越しを決めた。50歳以上の力士が勝ち越すのは、1905年(明38)5月の若木野以来116年ぶりという偉業だ。サッカー、J1横浜FCのFWカズ(三浦知良、53)も和歌山でのキャンプ中にプロ36年目の新シーズンへ、決意を口にした。

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華吹の最高位は、33歳で迎えた03年九州場所での東三段目18枚目。

力士として大成したとはいえないが、部屋ではちゃんこ長を務めている。幕内で活躍する明生、天空海、豊昇龍など、多くの力士の胃袋を支えている。長きにわたる貢献ぶりは計り知れない。立浪親方も「まだまだ若手の食育をして欲しい」と信頼を寄せる。

華吹が50歳でも現役を続けられている理由として、角界ならではのいくつかの要素がある。番付最高位の横綱は負け越しても番付が落ちないが、成績不振が続けば引退せざるを得ない。しかし、横綱以外は、負け越せば番付が落ちるものの、戦い続けることはできる。所属チームとの契約で、戦力外など、短ければ1年ごとにクビの危機が訪れる可能性のあるプロ野球やJリーグなどと違い、成績不振を理由に協会や所属部屋からクビを言い渡されることはない。不祥事などがなければ、引退は基本的に、力士の決断に委ねられている。力士本人に続ける気持ちがあり、師匠や部屋の理解があれば、現役でいることはできる。

年長力士は土俵外でも重宝される。新弟子に角界のしきたり、部屋の伝統を伝えるのはもちろん、ちゃんこ長を務めることも多く、部屋独自の味を後世に伝えるという側面でも大事な役割を担う。時には弟弟子の相談役にもなるなど、縁の下の力持ち的存在として頼られ、確かな存在感を放っている。

◆華吹大作◆ はなかぜ・だいさく。本名山口大作。1970年(昭45)5月28日、東京都足立区生まれ。86年春場所で初土俵、最高位は03年九州場所の東三段目18枚目。通算在位208場所は史上1位。ここまでの通算成績は668勝760敗13休。180センチ、110キロ。血液型B