スポーツには力がある。懸命に戦うベテラン、いやおっさんたちからも力もらい、負けじとみんな頑張ろう-。新型コロナウイルス感染拡大という状況が続き、誰もが疲弊している。出口はまだ見えない。そんな中、21日、大相撲初場所(両国国技館)で現役最年長50歳、東序ノ口9枚目の華吹(はなかぜ、立浪)が勝ち越しを決めた。50歳以上の力士が勝ち越すのは、1905年(明38)5月の若木野以来116年ぶりという偉業だ。サッカー、J1横浜FCのFWカズ(三浦知良、53)も和歌山でのキャンプ中にプロ36年目の新シーズンへ、決意を口にした。

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現役最年長の華吹が、偉業を達成した。西序ノ口11枚目の桜(34=高田川)との、両部屋ちゃんこ長の対決。立ち合いすぐに左を差して右上手を取ると、土俵中央付近で静止。桜の下手投げに耐えると、上手投げで相手の体勢を崩し頭を押さえながらのはたき込みで料理した。昨年5月28日に50歳になってから4場所目で初の勝ち越し。実に116年ぶりの50歳以上力士の勝ち越しとなった。

師匠の立浪親方(元小結旭豊)は、弟子の偉業に「先にネットニュースを見て知りました」と笑った。4番相撲で3勝1敗とし、勝ち越しに王手をかけていた。5番相撲で負けたが、立浪親方は声を掛けずに見守った。「部屋で顔を合わせることはあるけど、特に声を掛けることはしませんでした。本人なりに一生懸命やっていますから」。横綱千代の富士が圧倒的に強かった86年春場所が初土俵。昭和、平成、令和と元号を3つもまたいだ大ベテランに、多くの言葉掛けは不要だった。

本来なら、昨年にも引退する予定だったが、コロナ禍で影響を受けた就職先の受け入れ態勢が整わなかった。それは現在も変わらず、感染状況が落ち着き、受け入れ態勢が整うのを待ちながら、土俵にあがり続ける。コロナ禍で翻弄(ほんろう)されつつあるが、じっとこらえ踏ん張る。取組後も含め、多くを語らない華吹の奮闘に、立浪親方は「ここまできたら、いいんじゃない。すごいことでしょう。ほめてやってよ」と穏やかな口調で話した。コロナ禍でも奮闘するベテランの姿は、きっと多くの人に感動や勇気を与えるはずだ。【佐々木隆史】