大関正代(29=時津風)が、またも「ヒヤリ」の相撲ながらトップに並ぶ2敗を死守した。関脇隆の勝の圧力にたまらず引いてしまうが土俵際、右足を俵に残してのはたき込みを決めた。

かど番を脱出した10日目から4日間で計4度目の物言いがついたが、白星を手にした。西前頭筆頭の大栄翔は力強い相撲で11勝目。ピタリ並走で残り2日、互いに落とせない緊迫の土俵に臨む。

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行司泣かせだ。結びの一番を裁いた式守伊之助は隆の勝にあげた軍配をまわしうちわで正代へ。その後に物言いがつくも、俵にかけた正代の右足はしっかり残っていた。10日目から4日間で4度目の物言い。際どい勝負をいずれもつかみとり、トップの座を守った。

「ああいう形をなくそうと努力しているがとっさに出てしまう」。隆の勝の圧力に上体が浮き、「今日は引くことに専念しましたね」。まともに引いたが、土俵際での巧みさがある。「押し込まれたが、それでも勝てている。体の反応はいいかもしれない」。かつてはマイナス思考で「ネガティブ力士」と表現されたが、すべてに前向きな「ポジティブ力士」に変わった。

先に大栄翔が2敗を守った。後にとる正代に「負けられない」重圧がのしかかる。その中で危ない相撲を拾えているのは、運も味方している。「並んでいる力士がいるんで、まだ気は楽な方と思う。(優勝争いの)まだそんなに意識は…したくない。できればしたくない」と振り払った。

大栄翔とは3日目に負けて本割での対戦を終えているだけに、やり返すには相星で千秋楽、優勝決定戦しかない。その意欲はふつふつとたぎらせている。「(直接対決で)負けちゃってるんで。できるだけ落とさないように、千秋楽まで持ち込んで決定戦とかなればいいと思います」。14日目は関脇照ノ富士、千秋楽は大関朝乃山と実力者が立ちはだかるが、ここは1歩も引けない。「ついてる気もします」。目に見えない追い風を感じつつ、マッチレースに気合を入れた。【実藤健一】