課題克服は、創意工夫で乗り切る。昇進を決めた昨年の春場所から1年。先の初場所で11勝を挙げ、かど番を脱出し在位5場所目の大相撲春場所(3月14日初日、東京・両国国技館)を迎える大関朝乃山(26=高砂)が15日、稽古場取材で「工夫」を示した。

この日は基礎運動後、幕下の寺沢、朝玉勢、深井と20番取った(17勝3敗)。これまでと“変化”があったのは、土俵に入る前に、稽古場の羽目板に手を着いて、左右交互に足を上げを入念に5分ほど行ったこと。その意図について朝乃山は「体を丸くしようと(思って)」と明かした。どういうことか。「(立ち合いで相手に)当たって上体が起きちゃうところがある。体が大きいと伸びてしまう。それで前傾姿勢にしようと。体を前に倒せるように」と説明した。

恵まれた体を十分に生かし切れない現状に、先代師匠の錦島親方(元大関朝潮)も常々、稽古場で朝乃山に「アゴを引け」「胸をのけ反らせるな」と口酸っぱく言い聞かせていた。もちろん、そのアドバイスは体に染み込ませていただろうが、あらためて課題克服のために反復した格好だ。

幕下相手にも、立ち合いからすぐに上手を取らず、突き放して右を差す、左上手を取るという取り口も何度か見せた。「(相撲の)幅を広げないといけない。相手によって(相撲も)変えていかないといけない」と朝乃山。9日の取材対応では、何度も「頭を使わないといけない」と話した。心技体で自分に足りないものは「『心』と『技』がない」と答えたが、その技を磨くための工夫を、試行錯誤しながら稽古場で実践している。「心」については「大一番で弱い。大一番で負けてしまっている。普段の私生活から意識したい」と認識。目に見えない自分との闘いだが「『勝ちたい』という気持ちだと相撲が変になったりする。『負けない』という気持ちが必要。落ち着いて1日1番、自分の相撲を取れるようにしたい」と自分に言い聞かせるように話した。

最後に、ファンへ感謝の思いを。昨年はチョコレート含め段ボール2箱分のプレゼントが届いたという前日14日のバレンタインデー。今年は20個ほどのチョコが届けられたという。「手作りだったり、デパートに行って買ってくださったり、郵送にもお金がかかる。すごくうれしいです」と感謝の言葉を並べた。