なぜ慌てたような相撲を取るのか首をかしげた。高安の相撲だ。最後の左からの小手投げは強引だった。それまでの流れも何がしたいのか、どんな相撲を取るのかが見えない。感じられるのは心の迷いだ。悲しいかな優勝経験がないのが、最終盤にきて響いている。優勝経験があれば、心の持ちようや乗り越える勘どころが分かる。登ったことがない山には登れない。ここは正念場だ。残り2日、ここは吹っ切って開き直って臨んでほしい。追いつくチャンスだった朝乃山は、上体と下半身がマッチしてない。のど輪を外し貴景勝の体を崩したのはいいが、自分も足が出ないまま上体だけ前のめりに出たからはたかれた。14日目の照ノ富士戦は、この日のように突いて押して相手を動かし、揺さぶりながら攻めないと勝機は見えない。とはいえ賜杯に近いのは3敗の2人。横綱不在とはいえ優勝ラインを4敗まで下げたくないという思いも込めて。(元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)