優勝争いで関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)とともに3敗でトップに並んでいた小結高安(30=田子ノ浦)が、連日の小兵との対戦で苦杯をなめ4敗に後退してしまった。

前日は若隆景(26=荒汐)、そしてこの日は翔猿(28=追手風)と、優勝争いの終盤で、対戦回数の少ない小兵との対戦は高安も難しいところだった。案の定、思い切りが影を潜め、翔猿にかき回された。得意の左四つ、右上手を引きつけても前に出られず、迷いが感じられた。そうこうするうち、翔猿が足を跳ばし体勢を崩したところが勝負どころ、と上体が浮いたまま喜び勇んで出るところで、逆転の首ひねりを食らい、土俵下に転落した。

日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、高安の心理を察するように「安全に安全に、と思ったんだろうけど勝負どころで動かなかった。(というより)動けなかったのかな。勝負どころはナンボでもあった。(翔猿の)蹴返しでグラッとなって、ようやく出たけど、最初から力を出していれば相手も出てこないし蹴返しもなかった。後の祭りだろうけど」と解説した。がんじがらめになった高安の心理状況を「それだけ優勝にはプレッシャーがかかるということ。絶対有利になったのに最後の最後で思い切りがなかった」と、精神的重圧に押しつぶされている状況を説いた。

それでも、ここまで場所を引っ張ってきたことは誰もが認めるところ。「最後まで、まだ1番ある。チャンスはあるのだから、頑張ってほしいですね。せっかく優勝争いをしているんだから、力を出し切るんだと考えた方がいい」と心の持ちようをすすめた。千秋楽は、4敗同士の対戦で碧山に勝ち、貴景勝が照ノ富士を破れば優勝決定ともえ戦に持ち込まれるだけに、最後まで場所を盛り上げることに期待した。