大関に返り咲いた照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が“天敵”を下して、初日からの連勝を「9」に伸ばした。

過去7勝12敗で4連敗中と苦手にしている関脇高安をはたき込み。物言いがつく際どい一番を制した。1敗の大関貴景勝が敗れたため、後続との差は「2」に広がり、2場所連続4度目の優勝に向けて期待が高まってきた。貴景勝、小結御嶽海ら5人の2敗勢が追いかける。

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相撲は照ノ富士が劣勢だった。もろ差し狙いの高安に押し込まれ、前傾になって突き返す。差し手争いとなったが、まわしに手が届かなければ、相手の腕を抱え込む、得意の展開にも持ち込めない。投げを堪えて後退した土俵際。倒れ込みながら前に出る高安を、何とかはたき込んだ。行司軍配は照ノ富士。高安が前に落ちるのと、照ノ富士の足が出るのが同時ではないかと物言いがついたが、勝敗は覆らなかった。

審判団の協議を待っていた心境について、照ノ富士は「残った感覚はあった」と、さらりと言った。幕内復帰を果たした昨年7月場所から1度も勝てなかった相手。最後に勝ったのは前回大関だった17年夏場所と4年前にさかのぼる。「我慢して良かったです」。中盤戦のヤマ場を越え、短い言葉で勝利をかみしめた。

土俵下で取組を見守った藤島審判長(元大関武双山)は「高安は(まわしを)取らせない、差させない。照ノ富士にとって危ない相撲だった」と振り返る。場所前の稽古では、古傷である左膝の状態が上向かなかったという今場所。振り向けば、後続との差は早くも2差に広がっていた。

大関復帰場所で、早くも独走態勢に入っている29歳は「自分の相撲を取るだけ」と、多くを語らず気を引き締めた。幕内での初日からの連勝は、大関2場所目だった15年秋場所の11連勝が自己最長。勢いは止まりそうにない。【佐藤礼征】

◆V率100% 9日目終了時で後続に2差つけての単独トップは、1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では21回目。過去20回は63年九州場所の栃ノ海から、17年九州場所の白鵬まで全て優勝している。千秋楽に優勝が決まったのは98年の若乃花だけで、そのほか19例は13、14日目までに優勝が決定している。