豊昇龍の豪快な投げ技で今日は評論を…と思っていたら、結びの一番で波乱が起きました。1歩も引かなかった大栄翔の殊勲賞ものの勝利です。照ノ富士の立ち合いも悪くなかった。勝負を分けたのはその後、つかんだ左の下がりをすぐに離さなかったことにあると思います。これで左が欲しいことが大栄翔に伝わり、なおさら左を与えないように距離を取り、流れの中で下からどんどん、おっつけて横綱を押し上げました。その後、右の下がりをとりかけた後、照ノ富士は再び左を取ろうと手を伸ばしたところ、今度は大栄翔の右肘のサポーターに引っ掛かってしまった。すぐに離したけど、この間のコンマ何秒の動きが致命傷になりました。ここまで攻められても曲がっていた膝も、この日は伸びてしまったことも敗因でしょう。

10日目の宇良戦はめちゃくちゃ面白い相撲になると思います。宇良はケガしても何してもいい、と思ってぶつかるでしょう。ケガはしてほしくないけど、それぐらいの気持ちだから、それを踏まえて気合を入れて臨まないと横綱といえども痛い目に遭います。相撲の神様は「苦労してこの山を登りなさい」と試練を与えているようです。

最後に、豪快に投げられた若隆景ですが「負けて覚える相撲かな」。強いて言えば、土俵際でもっと腰を出して、足で相撲を取れれば防げたかもしれません。その対処法は負けたことで分かるもので、私も今の理事長に投げで負けた時に感じたこと。いい勉強になったと思えば意味ある黒星です。(日刊スポーツ評論家)