西前頭6枚目宇良(29=木瀬)が、自身初の結びの一番で魅せた。横綱照ノ富士(29=伊勢ケ浜)と1分32秒に及ぶ大熱戦。上手投げに屈したが、業師らしく肩すかしや足取り、最後はブリッジ姿勢で粘るなど会場を沸かせた。負けはしたが、新横綱に今場所最も長く相撲を取らせて苦しめた。ケガなどで一時は序二段まで番付を落とした苦労人2人には、会場から盛大な拍手が送られた。

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照ノ富士は、宇良との大熱戦を感慨深く振り返った。宇良の粘りを振り切って、単独首位を維持する9勝目。驚異的な身体能力で上手投げを堪えられたが「(自分は)まだ余裕あったので」と、冷静に相手の反撃を対処した。

宇良とは陥落から復活までの過程で、通ずる部分がある。「よく頑張ってきたなと。同じケガして、序二段まで落ちて」。お互いに両膝の負傷に苦しんで、幕内から序二段まで番付を落とした経験があるだけに、存在は気になっていた。同じ筋トレ好きと知って、より興味が湧いたという。「一生懸命筋トレしていると(話を)聞いていた。たまに会ったときに筋トレの話をしていた。結びで2人で取れたのは、良かったんじゃないですか」。この日が初顔合わせ。“業師”と呼ばれる相手だけに「いろいろやってくるだろうと思って落ち着いて見ていった」と警戒心を高めて臨んだ。

前日9日目に横綱初黒星を喫したが、連敗は回避した。1差で追う2敗勢は2人、2差の3敗勢は6人。17年春場所の稀勢の里に続く新横綱優勝に向けて、油断のできない終盤5日間に入る。【佐藤礼征】