期待の三銃士が、そろって負けてしまいました。結びの一番に臨んだ御嶽海は数日前から、作戦は考えていると言っていたようですが、何かをやるのではなくシンプルに、ただ一発で持っていくことだけを考えていたのでしょう。だから、もくろみが外れ左を取られるとなすすべもありません。両大関は今場所の対戦がなくなる可能性が高くなりますが、それだけ平幕の前に立ちはだかって壁を作ってほしかった。ところが、この2人も3敗の平幕に黒星。貴景勝は妙義龍をよく見て取りましたが、相撲が少し中途半端でした。正代は一発で持っていく勝ちパターンでしたが、阿武咲にこらえられました。両大関はじめ三役陣には頑張ってほしかった今場所です。

阿武咲と妙義龍の2ケタは立派です。ともにスピードを生かした相撲で似たタイプの力士が優勝争いに残りました。ともに取組後の表情に「やり切った」という、すがすがしい気持ちが見て取れるし、優勝争いの緊張感というより、何よりも精いっぱいの一生懸命さに好感が持てます。大関と三役陣の脱落は寂しいところですが、遠藤を含めた平幕3人の活躍がなければ、もっと寂しい場所になっていたでしょう。

さて優勝争いは照ノ富士有利に変わりはないでしょう。序二段からここまで突っ走ってきて、疲れがないわけがない。相手を引っ張り込んでも残れない相撲に疲れは感じますが、よくやっています。最後まで気力で引き締めてほしいものです。

(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)