新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、2場所ぶり5度目の優勝に王手をかけた。結びで大関貴景勝を下して12勝目。2敗で単独首位をキープし、優勝の可能性は3敗を守った妙義龍との2人に絞られた。千秋楽は妙義龍が負けるか、照ノ富士が大関正代に勝てば、優勝が決まる。新横綱場所での優勝は17年春場所の稀勢の里に続き、1場所15日制となった1949年(昭24)以降では5人目の快挙となる。

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巻き込まれた行司が吹っ飛ぶほどの、強烈な上手投げだった。照ノ富士は、貴景勝の突き押しを真っ向から受け止めた。出足の勢いを殺すと流れの中で相手のもろ差しとなったが、つかまえれば主導権は照ノ富士。左から豪快な上手投げでたたきつけた。土俵を転がった貴景勝と行司の式守伊之助が激突、土俵下に吹っ飛んでしまう勢いだった。

混戦模様の終盤戦は、新横綱が再び土俵を締めている。全勝ターンから一転、後半戦だけで2敗を喫したものの、千秋楽を単独首位で迎えることができた。1差で追走する妙義龍が負けるか、自身が勝てば優勝が決定する。

初めて経験する横綱としての15日間を残り1日で乗り切る。これまでと違うのは、毎日行う約1分50秒の横綱土俵入り。現役時代、腰痛に苦しんだ鶴竜親方(元横綱)も「(せり上がりで)攻めすぎると体に負担がかかる。その点、照ノ富士は(膝に不安がありながら)力強い」とたたえた。古傷である両膝に厳重なテーピングを施し、迫力ある不知火型を披露して観客を沸かせた。

取組後は3日連続でリモート取材に応じず、思いを内に秘めて千秋楽に備える。「(朝の)稽古場でもだいぶ疲れがたまってきているなと。日に日に(疲れが)表れている」と話すのは、兄弟子で伊勢ケ浜部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)。逆境に立ち向かいながら、新横綱場所を最高の形で飾る。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島) 照ノ富士は当たりをどんと受け止めて、最後は上手を取って投げた。落ち着いていた。集中力が違う。妙義龍は最高の相撲。ただ正代は最低の相撲。どっちが大関か分からない。