妙義龍がスピードを生かした最高の相撲を取りました。さすが体脂肪22%の力士、CMを思い出しますね。元々、長い相撲を取るタイプではありませんが、34歳という年齢もあって今場所は、いつにも増して相撲が速い。15日間、戦うことで疲労の蓄積を減らしたいと考えているんでしょう。ベテランの読みもさえました。正代の脇がガラ空きになることを、ちゃんと研究して弱点を突きました。それが瞬時に取った左の前みつです。もろ差しも得意ですが、対戦相手によって立ち合いを微妙に変えて、この日は前みつ狙いでした。力士によりけりですが15日間、必ず同じ立ち合いをする必要はないと思います。妙義龍の好調の要因の1つでしょう。

結びの一番で貴景勝の相撲は悪くなかった。下から下から攻め、うまく差しました。ただ悲しいかな、押し相撲の力士です。その後の攻め方が分からない。照ノ富士からすれば不利な体勢になったけど、何せ相手は貴景勝。差されたのは逆にラッキーだったでしょう。

さて千秋楽。本割の直接対決はなかったですね。照ノ富士は元気のない正代、妙義龍は明生と厳しい相手です。ただ14日目、明生は注文相撲で勝ちを拾いに行きました。直後の表情には「勝つには勝ったけどな」という気持ちが感じ取れました。翌日の相撲に影響を及ぼしかねない勝ち方で、尾を引くようなら妙義龍にも勝機は十分、あります。一方、正代には最後の最後に大関の責任を果たせるチャンスが巡ってきた、と意気に感じて土俵に上がってほしいものです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)