対戦相手によって攻め方を変えられる照ノ富士の強さを、まざまざと感じさせる相撲でした。明生の立ち合いは確かに強い。ただ、この当たりを受け止めれば二の矢の攻めがない。だから照ノ富士は立ち合いに集中して、左を差して1歩も下がらなかった。「絶対に引かない。踏ん張るぞ」という気持ちが顔の表情に出てました。明生も右上手を取ってたけど1枚まわし。これでは効きません。一方の横綱は左下をガッチリつかんでいたから、引きつけただけで明生の体が浮きました。そして左からの下手投げ。ここにもポイントがありました。明生は右から外掛けでしのごうとしましたが、これでは上体がさらに上がるだけ。内側に入れれば残れたと思いますが全ては、計算し尽くされた照ノ富士の快勝です。あの大きな体で攻め方が多彩で技術的にも高く、白鵬にはないものだと思います。

照ノ富士を1差で追う2人が13日目に対戦します。ここまで阿炎は引かずに取っていますが、貴景勝の頭に少しでも、かつての阿炎のイメージがあれば迷いも生じるでしょう。立ち合いは少し様子を見るのか、思い切り当たるかの2つに1つ。パワーにスピードも増している阿炎が怖いもの知らずでいった時に貴景勝は引くかもしれません。激しい攻防の実に面白い一番になるでしょう。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)