最後まで照ノ富士が横綱相撲を貫きました。対戦成績も五分で押し相撲の大関を相手に、よく見て受けて取り切りました。どちらかというと攻撃型の力士が14日目の阿炎戦にしても、守りも盤石です。貴景勝も自信をなくしたのではないかと思うぐらい、実力差はかなりの開きがあります。14日目に優勝が決まったということは全く関係なく、どんな状況に置かれても横綱としての務めを果たす、勝ち負けより横綱らしく生きるんだという、これからの生きざまを表すような相撲に感じました。誰にでも衰えは避けて通れないもので、横綱に昇進した時点で照ノ富士も引き際のことは考えていると思います。優勝インタビューも謙虚で力士のかがみ。その姿勢は最後まで貫いてほしいですね。

来年も照ノ富士中心に回るでしょうが、独走を許している正代や御嶽海には、実力者だけに責任を感じてほしいところです。尻に火がつかないと力を出せないようでは駄目です。期待が大きいからこそ奮起してほしい。今場所、三賞を受賞した阿炎、隆の勝に宇良、そして明生、大栄翔、若隆景と期待の力士はいます。ぜひとも来年は、横綱を突き上げるような新大関が誕生して、相撲界が活性化されることを願っています。今年の評論は、これにて千秋楽です。読者の皆さまもどうか、よいお年をお迎えください。ご愛読、ありがとうございました。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)