横綱の孫対決を、東前頭14枚目琴ノ若(24=佐渡ケ嶽)が制した。元横綱大鵬を祖父に持つ新入幕の王鵬との初顔合わせの一番。

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元横綱琴桜を祖父に持つ琴ノ若が、肩透かしで下して5勝目を挙げた。互いに元関脇を父に持つなど、3世代幕内対決でもあった。また2人は強豪・埼玉栄高出身でもあり、角界入り後初めての一番は先輩に軍配が上がった。

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横綱のDNAを引き継ぐ両者が、ついに本場所の土俵で見合った。先に手を付いて待つ王鵬に対し、琴ノ若はゆっくりと腰を落とした。立ち合いは1度目で成立。力強く踏み込んだ琴ノ若は左を差して勝機を見いだそうとしたが、王鵬の左のはず押しをくらって右脇ががら空きとなった。しかし、慌てず。ならばと左に動き、回り込みながら鮮やかに肩透かしを決めた。「しっかり踏み込んで、その後は流れよく自分から動くことができた。慌てず、落ちついて相撲が取れました」と堂々とした。

運命的な一番だった。互いに元横綱を祖父に持ち、琴ノ若の父は師匠である佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)で、王鵬の父は元関脇貴闘力。祖父同士、父同士は同じ時期に本土俵に上がり、幾度となく名勝負を繰り広げてきた。そんな祖父と父を持つ2人もまた、引きつけ合うようにしてこの日の本土俵に上がった。埼玉栄高ではチームメートだった2人。2学年上の琴ノ若は「一緒に同じ土俵で稽古してきた仲。相手のことをどうこう言える立場ではないけど、幕内で対戦できたことは良かった」と感慨にふけった。

琴桜対大鵬、琴ノ若対貴闘力の取組を、これまでに何度も動画などで見てきたという。ただ、大相撲特集などのテレビ放送などで見る機会が多かったといい「意識して見たことはありません」と何げなく見ていたが、気持ちに変化があった。3世代幕内対決とだけあって、周囲からの注目度が高かった一番。「(祖父も父も)上の番付で対戦している。地位も横綱と関脇で自分はまだまだ。勉強になりました」と祖父と父の偉大さを再確認した。

負け越しが2場所連続で続いているが、今場所は連敗もなく5勝と星を伸ばしている。「相手を意識しているわけではない。本場所の1日の一番と思っている」とこの日の取組にも平常心だったというが、刺激を受けたのは間違いない。「相手どうこうというより、出せるものをしっかり出すだけ」と引き締めた24歳。祖父と父に負けじと、さらなる高みを目指す。【佐々木隆史】

★琴ノ若との“3世対決”に敗れた王鵬 当たってしっかり起こしていきたかった。(埼玉栄の先輩相手で)楽しみでしたね。胸を借りてきた先輩なので、思い切りいくだけでした。(ともに祖父が横綱で過去の映像は)見ていないです。自分にとっては普通の一番なんで。この一番だから気合が入るというわけではなかった。

◆琴ノ若傑太(ことのわか・まさひろ) 本名・鎌谷将且。1997年(平9)11月19日、千葉県生まれ。埼玉栄から15年11月場所、佐渡ケ嶽部屋で初土俵。20年3月場所新入幕。通算203勝151敗10休。最高位は前頭3枚目。得意は右四つ、寄り。188センチ、165キロ。

▽父

◆琴ノ若晴将(ことのわか・てるまさ) 本名・鎌谷満也。1968年(昭43)5月15日、山形県生まれ。84年5月場所、佐渡ケ嶽部屋から初土俵。90年11月場所で新入幕。通算785勝764敗100休。最高位関脇。得意は右四つ、寄り。先代佐渡ケ嶽親方の長女と結婚。

▽祖父

◆琴桜傑将(ことざくら・まさかつ) 本名・鎌谷紀雄。1940年(昭15)11月26日、鳥取県生まれ。59年1月、佐渡ケ嶽部屋から初土俵。63年3月新入幕。第53代横綱。通算723勝428敗77休。幕内優勝5回。74年5月場所で引退。得意は押し、右四つ。

 

◆王鵬幸之介(おうほう・こうのすけ) 本名・納谷幸之介。2000年(平12)2月14日、東京都生まれ。埼玉栄から18年1月、大嶽部屋で初土俵。22年1月新入幕。通算124勝77敗。最高位は今場所の前頭18枚目。得意は突き、押し。大鵬の孫で、元関脇貴闘力の三男。191センチ、181キロ。

▽父

◆貴闘力忠茂(たかとうりき・ただしげ) 本名・鎌苅忠茂。1967年(昭42)9月28日、兵庫県生まれ。83年3月、藤島部屋から初土俵。90年9月場所新入幕。最高位関脇。02年9月場所で引退。通算754勝703敗。幕内優勝1回。得意は突き、押し。大横綱大鵬の三女との間に4男。

▽祖父

◆大鵬幸喜(たいほう・こうき) 本名・納谷幸喜。1940年5月29日、北海道生まれ。56年9月、二所ノ関部屋から初土俵。60年1月新入幕。第48代横綱。通算872勝182敗136休。幕内優勝32回。71年5月場所で引退。得意は左四つ、寄り。

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