大相撲初場所で3度目の優勝を果たした御嶽海が、新大関に昇進した。出身の長野県では、江戸時代に活躍した雷電以来227年ぶりの快挙。名門・出羽海部屋としては三重ノ海以来47年ぶりとなった。御嶽海とはどんな人間で、どんな力士なのか。「227年ぶり 信州大関御嶽海」と題し、3回にわたる連載で迫る。

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15年春場所で初土俵を踏んで41場所がたったが、御嶽海は途中休場こそ2度あるものの、全休は1度もない。小さなケガや体の張りがあったとしても、テーピングを施すほどの大きなケガの経験もない。それには「体技心」の信念が根底にあるからだ。

御嶽海のトレーナーを務める、大阪・東大阪市に鍼灸(しんきゅう)接骨院を構える中村吉朝さん(37)は「『心技体』という言葉があるけど、関取とは『体技心』だよね、という話をする」と語る。東洋大から角界入りした、いわゆる学生出身力士。中学や高校を卒業して角界入りする力士に比べると、実力はあったとしても力士生命はそう長くはない。御嶽海は「務めあげるのが大事だと思う。休場して出て、また休場して出てだと何をしているか分からない。意味がない」と出場し続けることに重きを置く。

また「体がないと心を立て直せない。技術は体があってついてくる」との考えもある。中村さんに体を診てもらう時は、みっちり2時間かけて異常がないかチェックするという。通常の長さの2倍にあたる8センチの御嶽海専用の鍼(はり)を用いたはり治療で体の状態を万全にする。中村さんは、御嶽海について「体のことにはとても繊細な関取。筋肉は柔らかくて、調子が悪いと『ここをこうして欲しい』とズバズバ的確に言ってきます」と驚く様子で話した。

押し相撲を貫くのにも、四つ相撲に比べて突き指などのケガが少なく、取組時間も短いため体力の消耗が少ない、という点があるからでもある。並々ならぬ体へのこだわりが、新大関昇進につながった。【佐々木隆史】(おわり)