大相撲夏場所の前相撲が12日、東京・両国国技館で行われ、東大在学中の須山(24=木瀬)の3連勝に、東大相撲部の後輩たちも大きな刺激を受けた。インターネットテレビ放送「Abema(アベマ)」で観戦した現主将の小山大貴さん(21=4年)は「相手は大学相撲のトップ(日体大)でレギュラーだった人。勝ったことのないような相手に、まさか勝つとは…。うれしいですけれど、驚きです」。団体、個人の日本一経験者からの“金星”を喜ぶだけでなく、「須山さんがつくってくれた教えあう部の雰囲気を、自分たちの成績に生かさないといけない」と恩返しを誓った。

「東大相撲部からの大相撲入りは例外的なこと。『俺も大相撲に』という人はいません。自分たちは東日本インカレとリーグ戦で2部残留が目標です」。6月の東日本学生選手権、10月の東日本学生リーグ戦が柱。まずは、今月末に北海道で開催される国公立大学大会で団体優勝を果たし、勢いをつけるつもりだ。

小山さんも大学院進学に向けた勉強と、週3度の稽古の文武両道中。大好きな奈良時代の王権を中心とした日本史の研究者が目標だ。1975年(昭50)創部の相撲部は新1年生1人を含み、部員は12人(うち女子マネジャー3人)。20年には安治川親方(元関脇安美錦)が稽古をつけてくれたこともある。東大出身初の角界入りで注目は集まっているが「正直、新たに稽古を見に来たいなどの声はないんです」と部員増への須山効果はまだなし。「どんどん有名になっていただいて来年の1年生に期待です」。須山と部のさらなる飛躍で「東大相撲部」の魅力も伝えていく。【鎌田直秀】

○…須山と相撲部同期の益田尚さん(22)は電車内で見ていたアベマで勝利を確認すると、思わず笑顔に。心の中でガッツポーズした。初日、2日目と違った突き押し相撲に「稽古で僕はよくやられていた。『あの時に受けた突っ張りだ』と思った」。万能さに須山らしさを感じていた。「大学相撲で活躍している選手に勝つのは可能性を感じる。大学から始めた僕らには、別世界でたどり着けないと思っていたが、見えない壁をぶち破ってくれた下克上を感じた」。相撲に集中してもらうため連絡はしていない。「大学で会えたら『おめでとう』と後ろから突き飛ばしてやりたいです」と再会を待つ。