23日に肺炎のため89歳で亡くなった人間国宝で歌舞伎俳優澤村田之助(さわむら・たのすけ)さんは、好角家としても知られ、03~13年には日本相撲協会の横綱審議委員会委員を務めた。

田之助さんの委員時代には、相撲界に激震が走る大きな出来事がいくつかあった。

1つは横綱朝青龍の引退だ。10年の初場所中、朝青龍が暴行事件を起こしたと写真週刊誌に報じられた。その後、横審設置60年の歴史の中で初めて、横綱への「引退勧告書」が提出された。提出と同時に、朝青龍も引退を表明した。

そのほか同年には「貴の乱」と呼ばれる騒動が起こった。当時の貴乃花親方が二所ノ関一門の意に背き、日本相撲協会理事選挙に立候補した。二所ノ関一門を破門になった貴乃花親方は、貴乃花一門を作った。

当時、田之助さんは「伝統ある世界で、改革をするというのは難しいこと」と、歌舞伎界とも重ね合わせるようにコメントしていた。

横審のあり方なども問われた時期だったが、田之助さんは大相撲への愛情を素直に見せ、批判されるのをいとわず苦言を呈してきた。