入幕2場所目の東前頭10枚目錦富士(26=伊勢ケ浜)が若元春との「好調対決」を押し出しで制し、2敗を守って勝ち越しを決めた。この日から休場した横綱照ノ富士にかわいがられてきた“秘蔵っ子”。横綱の無念を受け、過去の入幕3場所目を超える最速Vを狙う。西前頭4枚目の高安は全勝の北勝富士に土をつけ1差に迫った。玉鷲が優勝争いトップに並び、かど番の大関御嶽海は7敗目で後がなくなった。

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先が見えない場所で入幕2場所目の伏兵が浮上してきた。錦富士が若元春を押し出し2敗を守って勝ち越し。「めちゃくちゃうれしいです」と表情を崩した。

新入幕の先場所も11日目に勝ち越しを決め、10勝で敢闘賞を受賞。すでに折り紙付きの実力はあなどれない。優勝争いで1差となったが「優勝を争う中で自分は実力的に一番下なんで。意識すると硬くなる。(頭の)片隅に置くぐらいで頑張りたい」と言った。

この日から兄弟子の横綱照ノ富士が休場した。横綱土俵入りでは露払いを務める。何より入門当初から気にかけられ、かわいがられてきた。錦富士は「(横綱が膝を)3日目ぐらいから痛そうにしていた」と明かし、横綱から「俺は休場するけどその分頑張ってくれよ」と言われたという。

「横綱にはたくさん胸を出してもらい、教えてもらってきた。頑張りたい」。今年夏場所、照ノ富士が幕内優勝、錦富士が十両優勝を飾った。横綱が場所中、「一緒に優勝するぞ!」と後押しした結果でもあった。積み重なった恩返しとしても燃えるしかない。

昭和以降で入幕後の最速Vは、佐田の山(のちの横綱)の幕内3場所目。錦富士がこの大混戦場所を制すれば、その記録を超える。「優勝を意識すればバタバタしてしまう」と話す一方、「場所前から調整も体のケアも満足でやってきた。自信を持って臨めている」。三役以上で3敗以内の力士は、関脇若隆景だけ。ある意味歴史的な場所で、誰が頂点に立っても不思議はない。【実藤健一】

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