東前頭3枚目玉鷲(37=片男波)が、2度目の優勝をぐっと引き寄せた。

東前頭10枚目錦富士を突き落としで下し、2敗で単独首位を死守。14日目の翔猿戦に勝ち、3敗の高安と北勝富士がともに負ければ優勝が決まる。現役最年長関取が、昭和以降最年長優勝へ突き進む。

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ベテランの玉鷲が、11歳年下の錦富士を寄せ付けなかった。低く突っ込んできた小兵の当たりを受け止めながら、右のおっつけで体勢を崩した。前のめりになりながら、左足を取られてしぶとく残られたが動じない。左手で錦富士の頭を押さえながら、体ごと押し込んだ。「しっかり落ち着いてよかったと思う。(錦富士の)当たりは強かった」と振り返る余裕があった。

自身を含めて、部屋には力士が4人しかいない。幕下、序二段、序ノ口と圧倒的な番付差がある中、ひたむきに部屋での稽古で鍛えてきた。師匠の片男波親方(元関脇玉春日)の発案で、1対2で相撲を取る稽古を出稽古が禁止となったコロナ禍から実施。いくら番付差がある相手でも「なぁなぁでやったらケガする。相手の体の中心にしっかりこちらの体を合わせないと駄目」と、より丁寧な相撲を心がけるようになった。

2敗目を喫した12日目は緊張感があったというが、この日は「もったいない相撲をしないように。前に出る気持ちだった」と切り替えに成功した。引きずることなく、慌てず、がっちりと単独首位を死守。19年初場所以来、2度目の優勝が迫ってきた。

37歳10カ月での優勝なら、12年夏場所での旭天鵬の37歳8カ月を抜き、昭和以降最年長優勝となる。9日目には初土俵からの連続出場記録で歴代3位を記録するなど、まさに鉄人。「緊張しないように自分の相撲を取りたい」と自然体で賜杯を狙う。【佐々木隆史】

▽八角理事長(元横綱北勝海) 玉鷲は錦富士の立ち合いが良くて踏み込まれたが、よく見て突き落とした。高安の良さはかち上げだから、どんどんやればいい。優勝争いは14日目の玉鷲次第。4敗力士も含めて、最後まで諦めては駄目だ。

▽幕内後半戦の佐渡ケ嶽審判長(元関脇琴ノ若) 当たりは互角だったが、玉鷲の相撲勘が良かった。一度優勝も経験しているから動きが良かった。高安は良い相撲の内容。絶対にまわしを取られないよう、攻め切るという気持ちがあった。

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