大相撲秋場所を13勝2敗の好成績で制した玉鷲(37=片男波)が26日、東京都内の部屋からオンラインで一夜明け会見に臨んだ。

千秋楽は1差で追う高安との直接対決を押し出しで決めた。玉鷲の優勝は19年初場所以来2度目。37歳10カ月での優勝は、昭和以降の最年長記録となる。

千秋楽前夜、そして優勝を決めた夜も「眠りが悪かった」という。やはり相撲のことが頭から離れなかった。そんな重圧から開放された喜びも満ちていた。「(千秋楽、高安との一番は)思った通りの相撲ですごくうれしかった。(相手が)どんな状態できても自分の相撲だけ。(優勝の瞬間は)気持ちよかった。はぁとなりましたね。涙が出そうな感じ。でも次の相撲(取組)もあるんでじゃましないように、自分の心を静めていこうと思った」。

約3年8カ月前の優勝経験も生きたという。「(最初の優勝との違いは)もちろんありますね。2回目はこうなったらおかしくなる、疲れてしまう、というのが分かっていたので意識してやれた」。年齢を重ねて体力的には下降線でも、それを上回る精神面の積み上げがあった。

優勝を意識したのも12日目、若元春に負けて2敗目を喫した後という。優勝を争う他の力士も敗れ、単独首位の状況は変わらず。負けたことよりも、前向きにとらえる心があった。「悪いものは全部出してこれできれいさっぱりになって、明日から自分の相撲をとろうと思えた」と振り返る。

場所中は部屋の大先輩で71年10月に現役中に急逝した元横綱玉の海のしこ名を染めた浴衣を着た。玉鷲が自らインターネットのサイトで探し、求めた48年前の反物を仕立てたという。「かっこいい横綱で尊敬してます。(玉の海を)知らない人も大勢いると思いますので、知ってもらえたら」という思いがあった。

部屋の歴史をつむいできた先輩の思いも背負い、戦い抜いた。「少しでも喜んでくれたらと思います」。世間では“アラフォー”世代の37歳10カ月。その年齢を感じるのは「顔の老け方ですかね。泣いてる時の顔はブスだなって思いますね」とジョークを言いながら「年は気にしていない。まだまだ現役なんで。若手に負けたくない気持ちでやっている。せっかく土俵に上がっているのだから元気いっぱい相撲をとりたい」。

現在歴代3位の連続出場記録も続いている「鉄人」。「来場所もお客さんを喜ばせたい」と九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)に向けて、早くも意欲をたぎらせていた。