同じ1敗で大関経験者同士の対戦は、立ち合いで優位に立った平幕の高安(32=田子ノ浦)が、関脇御嶽海(29=出羽海)を寄り切りで下し5勝目を挙げた。

立ち合いで得意のかち上げを右から出した高安に対し、御嶽海はそれを避けるように少し右へずれるように立った。そのまま高安が押し込んだ後、御嶽海の右おっつけから右四つの体勢に。ここから一呼吸置いて体勢を整えた高安が、得意とは逆の四つではあったがジリジリとすり足で圧力をかけるように前進。逆転のスキを与えず、危なげなく寄り切った。

今年は優勝同点が1回、優勝次点が1回と、あと1歩で悲願の賜杯に手が届かない高安にとって“三度目の正直”をかなえるためにも勝っておきたい一番。一方、10勝で大関復帰がかなう御嶽海にとっても、過去9勝20敗と苦手の高安に勝って“大関復帰マジック”を減らしたいところ。ともに中盤の重要な一番だったが、合口通りの結果となった。

報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、立ち合いが全てだったことを指摘。「御嶽海は立ち合いが失敗。自信がないから(右へ)変化になった。気持ちが弱気だった」と弱点をズバリと突いた。逆に勝った高安については「立ち合いで迷いなく右からかち上げた」とし、その後の慎重な攻めも「出るところで(御嶽海に逆転の)突き落としがあるのを分かっているからジックリ行った」と冷静さも分析した。悲願の初優勝に向けて「勝ち出すと迷いが出てくることがある。迷わず、この立ち合いの気持ちを忘れないこと」と話していた。