東前頭筆頭高安(32=田子ノ浦)が、西前頭13枚目王鵬との2敗対決を制し、ついに単独トップに立った。今年2度の優勝争いを経験した大関経験者が初優勝へ大きく前進。3敗に大関貴景勝ら4人が名を連ね、賜杯の行方は千秋楽までもつれ込むことになったが、単独先頭で優位に立つ。かど番の正代は負け越しとなり、大関陥落が決まった。

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高安の初賜杯への強い思いが、立ち合いに表れた。新進気鋭の王鵬に強烈な右のかち上げをお見舞い。受け止められたが止まらなかった。テンポのいい突き押しで攻めながら、左前まわしを取った。瞬時に体を寄せて、右上手を取って胸を合わせる。さらに左を深く差して盤石の体勢に。タイミングを見計らい、力いっぱいの上手投げで土俵にはわせた。「稽古場でも胸を合わせたことがある。ベストを出しました」と大関経験者らしく、余裕を見せた。

初賜杯がぐっと近づいた。今年は春場所と秋場所で優勝にあと1歩届かず。今場所も千秋楽までもつれ込むことになったが重圧はない。「いい緊張感があるので楽しくやりたい。経験はあるので、まぁ、のびのびやりたいです」と穏やかな表情だった。

05年春場所が初土俵。初土俵から所要105場所での初優勝なら、優勝制度ができた1909年(明42)以降、歴代2位のスロー記録だ。3場所連続で平幕優勝なら史上初となるなど、記録が後押しする。「しんどい時期があったけど、ここに来てようやく力が発揮できるようになった」とまだまだ成長を実感するベテランが賜杯へ突き進む。【佐々木隆史】

▽幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長 高安はしっかり当たって左四つ。自分の形になった。力の差を見せつけようとして取ったんじゃないでしょうか。貴景勝は落ち着いて相手をよく見て相撲を取った。豊昇龍はここ2、3日硬くなっている。余計なことを考えているのでは。阿炎はこの辺で勝つのは不思議ではない。もともと力がある。

○…20年初場所で幕内優勝した東十両12枚目徳勝龍が9敗目を喫し、幕下転落の危機を迎えた。再十両の12年夏場所から関取の座を維持。幕内は昨年秋場所が最後で、同年九州場所から7場所連続で十両となっている。幕内優勝経験者が幕下以下に落ちれば照ノ富士と朝乃山に次いで3人目となる。苦境に立つ36歳はリモート取材に応じなかった。

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