同じ王鵬を相手に12日目に負けた豊昇龍と、この日勝った高安の違い。そこに経験値の差を感じました。

この日の高安は、かち上げで先手を取り、突き押しの応酬でも常に前に出てました。ただ、この先も無理に出れば何か落とし穴があるかもしれない、と瞬時の判断で一呼吸置き左の下手を引きました。押し相撲相手に、これで万全です。前日の豊昇龍もワンテンポ置いて、まわしを取りに行けば良かったのに、王鵬の術中にはまり土俵際で逆転されました。そこが2人の経験値の差で、高安は前日の豊昇龍を反面教師にしたように見えました。

これまで高安は何度も嫌というほど、攻め急ぎや詰めを欠いて土俵際の逆転で痛い目にあっています。苦い経験を糧に、同じ失敗を繰り返すまいという相撲は今場所、何番もあります。ここまでは冷静です。問題はここからです。全勝優勝するような力士でも最終盤では、どうしても緊張で相撲がぎこちなくなります。ここまで、そんな相撲がない高安だけに余計、そこは心配ですが、たとえそうなっても1差のリードがあるとプラス思考にとらえればいいと思います。ここが初優勝への踏ん張り所。これまでの経験を生かしてほしいです。(日刊スポーツ評論家)