悲願の初優勝を目指す高安(32=田子ノ浦)が、幕内下位の輝(28=高田川)に、ややてこずりながらも、はたき込みで破り優勝同点だった今年3月の春場所以来の12勝目。2敗と優勝争いの単独トップの座を守った。

右からのかち上げで押し込むも、輝の立ち合いも万全で逆に突っ張られアゴが上がる場面もあった。焦りからか2度いなし、引いたことで輝を呼び込んでしまったが、相手が前のめりに出るところを冷静に見たのか、左へ回り込みながら、はたきこみで勝負を決めた。

この一番について、報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「(輝が)出足を止められていっぺんに持って行かれるのかな? と思ったが、輝がよく残り予想以上に頑張った」と東前頭15枚目の優勝争いに残った輝を、まずは評価。その上で高安について「かち上げて差して、まわしを取りたかったのが、突っ張られて焦ったね。(優勝が目前に迫り)緊張もあるでしょう。立ち合いは悪くはないけど、肩に力が入りすぎている」と悲願の初Vを目前にした大関経験者の心情を察するように話した。

その後、3敗同士の対戦で勝って優勝争いに残ったのが平幕の阿炎(28=錣山)と大関貴景勝(25=常盤山)。1差リードの分、高安有利は変わらないが、精神状態が左右しそう。同理事長は「これからでしょう。明日の一番。もう1番(本割で)負けても、もう1番(の優勝決定戦が)あるから思い切って行けるか…。(2番あると思うのも)難しいところだ」と話した。

▽幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山) 輝が頑張っていた。大健闘じゃないか。高安は冷静というより必死だったと思う。高安は明日勝てば優勝が決まる。いかに集中できるか。コロナ禍でこれだけお客さんが来ているのだから、勝ち負けだけではなく内容のある相撲を取りたいとみんな思っている。

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