綱とり大関の貴景勝(26=常盤山)が、左膝の負傷で不安視される中、持ち前の押し相撲で快勝し、連敗は免れ3勝目(2敗)を挙げた。右の上手狙いで立った平幕の竜電(32=高田川)を電車道で押し切り、わずか2秒1で押し出した。

勝った3日目の正代戦で左膝を痛め、前日4日目は阿炎の引き技に屈した。白い包帯に巻かれた左膝に爆弾を抱える手負いの状態で、報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は取組前に「竜電は(立ち合いで)胸を出してくるわけではないし、体も柔らかいから、貴景勝は足を送れないと、はたかれたりする」と思い切り踏み込めるかを勝負のポイントに挙げていた。さらに「土俵に上がったら(ケガなど)何も考えない方がいい。考えたら相撲を取れない」。竜電に勝機があるとすれば、貴景勝の立ち合いの当たりを止められるかにあり、さらに「相手(貴景勝)の足が悪いことは分かっているから、より残れる」とケガを抱えて臨む劣勢さも察した。

勝負は、あっけないほどの貴景勝の快勝。集中して自分の相撲に徹した貴景勝の心中を、同理事長は「『これしかない』という気持ちでしょう」と察した上で「(この先も)大変だけど頑張るしかない」と話した。