幕内最軽量の勢いが止まらない。西前頭5枚目の翠富士(26=伊勢ケ浜)が、自分より72キロも重い碧山(36=春日野)を、真っ向勝負の末、寄り切りで下し8連勝。優勝争いで単独トップの座を守るとともに、幕内第1号の勝ち越しをストレートで決めた。

碧山の突っ張りを正面から受けてもひるまず、いなして右をのぞかせ頭をつけた。しばし動きが止まった後、得意の肩透かしを引いて189キロをグラつかせて体勢を崩すと、再び懐に潜り込み正面土俵に寄り切った。

報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「かち上げられても下がらずに自信を持って相撲を取っている。弱気になったら当たって、すぐにいなしたりしただろうが、そんなことを頭に一切ない。(自分の)当たりが強いから体が小さくても下がらない」と連日の高評価の言葉を述べた。さらに「体が小さい人は気持ちで負けたら終わってしまう。(ストレート給金で)自信がつくんじゃないかな」と続けた。

1差で追うのは小結大栄翔(29=追手風)1人になった。優勝争いでがぜん、注目される小兵の翠富士だが「これからでしょうね」と同理事長。優勝争いを「中日から意識してしまうと息切れする」と見通し、翠富士には「『あと2つぐらい負けられる』ぐらいの気持ちでいれば体が動くでしょう。全部勝たないと、となると体が動かなくなる」と前向きなマイナス思考? を勧める。後続も「1敗はいるけど残り全勝するかとなると、そうはいかないでしょう」という読みに裏付けた解説だ。「まあ、そうはなかなか思えないだろうけど」と付け加えながらも、終盤戦に向けての余裕を持った心構えを説いていた。