小結大栄翔(29=追手風)が1敗を守り、全勝の翠富士との1差をキープした。同じ押し相撲の阿炎を押し出し。前日7日目に小結若元春に、逆転で今場所初黒星を喫した反省を生かして攻めきった。その7日目から埼玉栄高の後輩で、仲の良い大関貴景勝が休場。再出場はしない見通しで、綱とり場所から一転、来場所はかど番となる貴景勝に、エールを送る2度目の優勝を目指す。全勝と1敗は各1人で、2敗で琴ノ若、正代、高安らが追う。

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大栄翔は、止まらなかった。長い両手から繰り出される阿炎の突っ張りに、何度も上体を起こされた。それでも右をおっつけると勢いは加速。休まず攻めて押し出した。「落ち着いて、しっかり、相手をよく見て相撲を取れた。立ち合いで当たり負けないこと。先に攻めることが、突き、押し同士だと大事。さらに乗っていける」と胸を張った。

前日は一方的に押し込みながら、土俵際で逆転の突き落としに敗れた。無敗を守った翠富士とは1差に後退。この日も先に翠富士が勝っており、負ければ折り返しの8日目で2差。21年初場所以来、2度目の優勝が遠ざかるところで踏ん張った。「昨日は勝ち急いだというか、勝手に自爆したようなもの」。取組は映像で確認。上体が流れた前日とは一転、下からあてがって最後は阿炎をバンザイさせる隙のない白星だった。

前日から仲の良い貴景勝が休場した。普段は年齢が上の大栄翔の方がいじられ役だが、綱とりが消滅した心中を察し、この日は「力士なのでケガはつきもの。自分は自分で頑張るだけ」と、先輩らしく多くを語らなかった。優勝した2月の大相撲トーナメントでは、最後まで残って祝福してもらった。今度は傷心の貴景勝に刺激を与え、ライバル心をくすぐる幕内2度目の優勝を狙う。【高田文太】