優勝争いには加われなかった豊昇龍ですが、あらためて近い将来、大関になる素材だと感じさせる若元春戦でした。

左四つの若元春とはけんか四つですが、それを承知で右の上手狙いで立ちました。先に上手を取れば相手の四つでも勝つ確率は高いと踏んでました。ポイントは相手に浅く差させた下手の位置です。深く差して腰を構えると若元春は残り腰が強いんです。相手得意の左だけど浅く差させて、自分は十分な上手。そして動きが止まった後、若元春が右上手を探ろうとしたタイミングを見計らったかのように、柔道のような巻き込みながらの上手投げです。このスピードと強弱の使い分けも豊昇龍の真骨頂です。

精神的なずぶとさも次期大関を感じさせます。最後の仕切りは、待ったをしそうなスローな腰の下ろし方で館内もざわめきました。そんな空気も何のその、何を言われようが自分のタイミングで立つという強い気持ちが見えました。逆に若元春はちゅうちょしながら立ってしまった、という微妙な間合いでした。自分のペースで相手を引き込む、そんな豊昇龍の意志の強さのようなものを感じました。順番はどうであれ、霧馬山と豊昇龍が大関に一番、近いことは間違いありません。優勝を争う千秋楽の結びの一番は、大栄翔が先手を取って突っ張って行けるか、霧馬山が四つに組めるかがポイントで、決定戦に持ち込めば霧馬山が有利かな、とみています。(日刊スポーツ評論家)