本割、優勝決定戦ともに大栄翔の当たり、突き押しの威力が半減してしまいました。

本割は霧馬山が何をやってくるか気をつけるように、相手を見ながらもろ手で立ちました。頭から当たるしかなかった決定戦は、頭より先に手で行ってしまいました。こうなると腰も引けて2番とも威力半減です。やはり押し相撲は立ち合いの当たりが弱いと、二の矢の攻めもなくなり土俵際の落とし穴ははまります。今場所は腰をぶつけるようにして足を運んでいた大栄翔だけに、最後の最後になってもったいないことをしたなと思います。

1差で追う立場で臨んだ霧馬山は、精神的には大栄翔より楽だったでしょう。押し込まれはしましたが、土俵際で弓なりになって粘ったことで、突きにくくさせました。四つに組んだら勝ち目はない、と大栄翔に思わせる強さも、先場所から光ります。初優勝にも浮かれず「相撲自体は良くなかった」とインタビューで話していた言葉は、まだまだ自分を向上させようという自覚の表れでしょう。来場所は大関とりです。体の柔らかさは持って生まれたものとして、力強さをアピールしてほしい。当たり負けしない強さ、重さを全部の相撲には求めませんが、プラスアルファしてほしいと思います。霧馬山に引っ張られるように豊昇龍は10勝、若元春も11勝で足がかりをつかみ、大栄翔も次期大関に名乗りを上げた今場所。終わったばかりなのに、もう来場所が楽しみです。照ノ富士と貴景勝が復帰した上で、上位陣による「実力者による混戦」に期待します。(日刊スポーツ評論家)