大相撲を舞台にしたNetflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」で、多くの元力士たちが役者として奮闘している。5月4日から配信開始となり、日本の「今日のシリーズTOP10」で5日間連続1位を獲得し、Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で6位を獲得。元十両飛翔富士の住洋樹(すみ・ひろき)は193センチ、260キロの巨体を生かした最強無敗の静内(しずうち)として存在感を放っている。劇中では、主人公・猿桜(一ノ瀬ワタル)のライバルとして一言もしゃべらない役柄だったが、今回のインタビューでは冗舌に作品の魅力などについて語ってもらった。前編、後編に分けてお送りします。【取材・構成=佐々木一郎】

-サンクチュアリが公開され、反響はいかがですか

そのへんを歩いていても声をかけられるようになりました。現役時代よりも、声をかけられます。インスタやTikTok(ティックトック)もやっていますが「静内さんですよね?」とか聞かれます。劇中はしゃべらないんですけど、実際はしゃべりますよ(笑い)。(静内のほおにある)あのキズはどうなったんですかとか、あれは本物だったんですかとかも聞かれますね。インスタのフォロワーは1000人増えました。ほぼ外国人です。ツイッターも2000人増えましたが、こちらは日本人が多いですね。

-作品を見た感想は

5月1日にNetflixに加入しました。4日に配信が始まり、その後に見ました。やっぱり、すごいっすね。取組のシーンもそうですが、猿将部屋の風景は、まるっきり相撲部屋。雰囲気が全部出ています。

町中で声をかけられるようになって思うのは、相撲に興味をもった人が増えたということです。いろんなスポーツある中で力士になりたい人は今、少ないかもしれません。ちょっとでも相撲に興味をもってくれる人が増えるとうれしいです。

-当初、静内役のキャスティングは難航すると思われたようですが、住さんのサイズ、雰囲気がぴったりだったそうです

正解ですね(笑い)。でも、台本をみると、セリフがない。全然ないということは表情、顔で演技をするのだと分かりました。これは、めっちゃ難しいんだろうなと思いました。

-実際、出番が多いのにセリフがないという難しさは

超難しいです。監督にはよく、「伏し目がちに」と言われていました。「その目線じゃない」とか。静内って、戦う時はニヤッとしますが、何もない悲しい時は静かな感じ。戦う時は怖い静内がでる。その差をつけるのは難しかったですね。

-作品には元力士も多数出演しています。ほかの俳優は、時間をかけて体作りから始めたと聞きました。その準備などは、どのように見ていましたか

1~3年で力士の体に近づけるのは難しいのですが、それでも毎日、四股を踏んでトレーニングをしていました。猿空役の石川修平さんは、めちゃめちゃ力士の体になっていました。増量して、本物の三段目下くらい。力士役も含めて、みんなが、撮影クルー全体が本当の相撲部屋みたいでした。監督が親方です。

-稽古や取組などのアクションシーンは迫力がありました。実際に突っ張ったり、相撲を取ったりするシーンは難しかったのでは

自分は元力士なので、さすがに100%の力ではいけません。相手がつぶれてしまうので。それでも、稽古場のシーンは、駒虎役の相馬(龍輔)さんが「がっつりぶつかっていいよ」と言ってくれたので、少し調整しながらいきました。猿桜との夢の中での取組のシーンは、本気でやられています。僕でなければ、受けきれなかった。みんなが一丸となって取り組んでこそ、ああいう映像が撮れたのだと思います。

-静内は無敵の存在として描かれていました。住さんは引退して6年たちましたが、また相撲を取りたくなったのでは

なりました。静内としてもう1回、力士になりたい。静内は幕下まで30連勝くらいした。僕もケガして復帰してから、全勝してきた。21連勝して、濱口(現・志摩ノ海)に勝った。そして千代翔馬に負けるまで22連勝した。静内の30連勝ってすごい。静内という名前、最強キャラでなぐりこんでいったら、どのくらいになるかなと。

インタビューの後編では、「サンクチュアリ -聖域-」の続編への期待などについても語ります。(つづく)

「サンクチュアリ -聖域-」出演の元飛翔富士インタビュー後編

◆住洋樹(すみ・ひろき)1989年(平成元年)7月14日、神戸市兵庫区生まれ。中村部屋に入門し、2005年春初土俵。しこ名は、07年名古屋場所で住から飛翔富士に改名。2011年秋場所で新十両昇進を果たした。17年初場所限りで引退。通算234勝197敗47休。引退後は飲食店経営のほか、18年4月に米プロレス団体WWEのリングに上がった。