大関時代に照ノ富士に5戦全敗していた時の朝乃山の取り口は、攻めきったと思われた土俵際で、上半身が伸びてしまう印象がありました。下半身で相撲を取っていなかったということです。

2年たったこの日の対戦で改善点があったことは評価に値します。立ち合いも頭から強く当たって、左からのおっつけで横綱を後退させました。その左を差した体勢でも上体は伸びきっていない。ただ、残念ながらここからの攻めが半テンポ遅かった。差した左もかいなを返すわけでもなく、これでは横綱に抱えられるだけです。前に出るにしても、もっと腰を相手にぶつけるようにしないと圧力が伝わりません。これでは横綱の思うつぼ。劣勢に見えて照ノ富士には状況判断する余裕がありました。幕内上位と当たる体力が、まだついていないうちの幕内復帰で、今場所の朝乃山は気力で乗り切っていると思います。残る2日も大事な土俵になります。

優勝争いは、14日目に照ノ富士が直接対決で霧馬山に勝てば優勝決定です。ただ霧馬山にも勝機は十分あります。この日の北青鵬戦で見せたように、上手を取って頭をつけ半身の体勢で横に食い付いたり、足技で横綱を崩したり、いろいろ作戦はあります。長い相撲にでもなれば、より霧馬山が有利かなと思います。勝って優勝を決めたい照ノ富士は右を差して霧馬山を起こし、早めに勝負を決めたいところでしょう。(日刊スポーツ評論家)