大関経験者で西前頭2枚目の朝乃山(29=高砂)が、3連勝で5勝4敗と白星を先行させた。21年初場所以来、2年8カ月ぶりの顔合わせとなった前頭玉鷲を寄り切った。相手は初日から白星がなく、前日8日目にストレートで負け越しが決定と元気がなかった上に、これで対戦成績は朝乃山の5連勝という合口の良さも後押しした。10日目は、関脇以上では唯一、対戦を残していた関脇大栄翔戦。最近5度の対戦では、先場所途中休場の不戦敗を含めて1勝4敗と、この日とは一転して、合口の悪い相手との顔合わせとなる。
圧力のある相手の立ち合いを、逃げずに正面で受け止めると、右を差し、まわしにこだわらずに前に出た。そのまま寄り切り、相手の足が土俵を割ったのを見届けてから、勢い余って土俵下まで飛んだ。相手は初日から全敗だったが「玉鷲関は(幕内)優勝を2回しているし、油断できなかった。踏み込み負けすると、持っていかれて相手のペースになる」と警戒し、立ち合いで主導権を握って押し込んだ。「土俵際で足がバタついていた」と振り返ったが、際どい勝負にはならなかった。相手が土俵を割る前に、苦し紛れに逆転の突き落としを繰り出してこないかも警戒しながら、冷静に取り切っていた。
前日はけんか四つの明生の攻め手を封じる完勝だった。「(勝った)先場所も(敗れた)先々場所も、もろ差しを許していたので」と、立ち合いは右を固めて相手に左を差させなかった。同時に左は抱えて、身動きを取らせずに前に出ると、流れの中で右をねじ込んで寄り切った。「右を差し勝って、途中から下手も取れた。圧力をかけながら足を出せた」と、好内容の取組にうなずいていた。
2連勝で始まった今場所は、3日目から小結錦木と3大関に敗れ、19年春場所以来、4年半ぶりの4連敗を喫した。ただ、場所前に痛めた右足親指は、一時は腫れて血管も見えない状態だったが「腫れが引いて血管も見えるようになった」と、快方に向かっていることは実感していた。その中で、対戦相手も平幕となり、3連勝を飾った。
10日目は再び三役戦。しかも優勝争いをしていた5月の夏場所では、終盤12日目に敗れ、4年ぶり2度目の優勝のムードを沈静化されられた大栄翔と当たる。かねて「特に意識する」と話していた同い年の相手を。この日の取組後も「5月は負けているし、リベンジしたい」ときっぱり。勝って4連勝とし、目標の2桁白星へ勢いを加速させるつもりだ。