立行司の第41代式守伊之助が、2日連続の軍配差し違えを何とか回避した。

貴景勝-宇良の一番は、貴景勝が体ごと一気に押し込んで宇良をはじき飛ばしたが、宇良も土俵際でジャンプする形で粘った。貴景勝の左手が先についたが、その時の宇良の体勢は完全に土俵外で宙を飛んでおり、いわゆる「体がない」状態。難しい判断を迫られたが、伊之助は宇良に軍配を上げた。

だが、ここで物言いがつき協議に入った。審判部の部長で、この日の幕内後半戦の審判長を務めた佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「もう一丁かな、と思いながら(協議が行われる土俵に)上がりました。ビデオ室と連絡を取り合いながら(ビデオ室の見解も)もう一丁かな、と。審判で(話し合って)も、もう一丁ということになりました」と説明した。体がある、なしの判断は微妙なものだが、この日の宇良の体勢については、ビデオ室の見方によると「宇良の体は飛んでも(飛んだ時は土俵の)中にある、ということでした」(同親方)という。

結局、同体取り直しで、伊之助の差し違えは回避され、取り直しの一番は貴景勝の勝利で終わった。伊之助は前日9日目の琴ノ若-豊昇龍の結びの一番で軍配差し違え。微妙な一番で審判でも意見が分かれたが、19年初場所の昇格以降で11度目の差し違えだった。打ち出し後に、日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)の元を訪れ、進退伺を申し出たが、慰留されていた。