返り入幕の東前頭15枚目・熱海富士(21=伊勢ケ浜)が2桁10勝目で、単独トップを走る優勝争いでも2差をつけた。

初めての幕内後半、三役戦で小結翔猿と対戦した。立ち合い、右四つに組んで動きを封じると左上手を力強く引きつけて豪快な投げを決めた。「うれしいですね。後半戦も三役(との取組)も初めてだったんでよかったです」。支度部屋では表情を緩めた。

新入幕の昨年九州場所は4勝11敗と大きな壁に阻まれた。横綱照ノ富士ら多くの関取が在籍する部屋で、自身を見直すように猛稽古に取り組んだ。十両で今年夏場所13勝、先場所は11勝4敗で優勝と、地力を証明して幕内に帰ってきた。

2敗だった高安が敗れて2差に開いたが、まだまだ気負いは感じさせない。「ちゃんと眠れてます。夢はどうかな、見てるのかな」。周囲からはプロ野球で18年ぶりのリーグ優勝を飾った阪神にちなみ「アレを」と言われる。しかし、熱海富士は「みんな『アレ』って言うけど『アレ』って何だろう」と真剣に言う。

12日目は関脇大栄翔との対戦が組まれた。「あと4番。上と当たるが頑張りたいです。(優勝の意識は)まだまだです」。12年9月3日の生まれ。優勝すれば歴代4位の年少記録となるが、熱海富士は無欲を貫いて残り4日間に臨む。