優勝争いで単独トップに立っていた、返り入幕で東前頭15枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)を、番付上位者の意地で大関貴景勝(27=常盤山)が破り、10勝3敗で両者が並んだ。

立ち合いは熱海富士がやや踏み込んで優位に立ったが、貴景勝も徐々に圧力をかけ押し込んだ。押し合いの中、貴景勝の左からのいなしに熱海富士が体勢を崩した。そこを逃さず、普段は見せない差して出る相撲に転じた貴景勝が、左をのぞかせ右を深く入れると、そのまま寄り切った。

報道陣の取材に対応した日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、冷静にこの一番を分析。「普通にやれば、これが力の差でしょう」と切り出した。立ち合いからの流れは「立ち合いから押されていない。押し込んでいる」と熱海富士の善戦を評価しつつ、21歳の挑戦を受けた貴景勝について「よく足を送っている。初めての相手だから、いつものように、いっぺんに押すのでなく、見て行った感じだった」と話した。これで両者がトップに並んだが、勝った貴景勝が残り2日に大関戦を残すことから「貴景勝は明日からの方がしんどいでしょう」とし、優勝争いがこの2人に絞られたか? の問いにも「絞られたとは言えない」。優勝ラインが4敗に下がることも含め、残り2日に波乱が起こる可能性をにおわせた。

また、幕内後半の審判長を務めた審判部の佐渡ケ嶽部長(元関脇琴ノ若)は、貴景勝の精神面を称賛。「貴景勝の意地、根性を見ました。あの根性をみんな見習ってほしい。オレが(やってやる)…という気持ちが相撲から伝わってきた」とたたえた。相撲の流れも「立ち合いの当たりは五分より熱海富士が有利だったけど、あとの流れは経験と意地でしょう」と番付の権威を保った大関を評価した。「本来なら大関陣に場所を引っ張ってもらいたかった」と上位陣が中盤まで低迷していたが「貴景勝がトップに並んだから」と取組編成の意図をくみ取るかのような大関を、ここでも称賛。優勝争いについては「昨日、今日の相撲を見れば貴景勝かな、と思う」と見通しを語っていた。