ついに捉えた! 大関貴景勝(27=常盤山)が、1差で追っていた東前頭15枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)を破り、5連勝で10勝3敗として優勝争いの先頭に並んだ。
大一番で攻め続け、最後は体を預けて寄り切った。押し相撲の貴景勝が寄り切りで勝つのは全416勝のうち、わずか6度目。4度目の優勝へ、気迫で白星をつかんだ。勝てば初優勝に王手だった熱海富士は、12日目の関脇大栄翔戦に続き痛恨の2連敗。14日目は貴景勝が大関豊昇龍戦、熱海富士が前頭阿炎戦で4人の4敗勢が追う。
◇ ◇ ◇
熱海富士が痛恨の3敗目を喫した。力を振り絞ったが、貴景勝の壁は厚かった。「悔しいなぁ。強いすね。大関だもん」と感情を吐き出した。186センチ、181キロの体を生かした立ち合いは通用した。前に出る積極的な攻めから引きに回った相手に詰め寄ったが、左にいなされたところで生まれた隙を突かれた。右を差されて体を起こされ、一気に押し込まれて土俵を割った。「稽古が足りないすね」と悔やんだ。
出場力士のうち幕内最年少の21歳は、再入幕を果たした今場所序盤から快進撃を続けた。10日目に高安を下して単独トップに立つも、日を追うごとに番付の重みがのしかかった。11日目から上位戦が組まれ、12日目に大栄翔、この日は貴景勝と2連敗を喫した。一時は2つあった後続との差を一気に詰められた。13日目終了時点でついに貴景勝に並ばれた。
上位陣と当たった3日間は、さぞかしプレッシャーもあっただろう。取組までまだ30分以上もあったにもかかわらず、早々とアップを済ませ、支度部屋を出て花道で準備する姿が見られた。本人は特に変わらないルーティンというが、周囲と駆け引きしながら臨む苦労は計り知れないはずだ。
それでも「こんな時間に自分が相撲を取れたのは普通あり得なかった」と前向きな姿勢を崩さなかった。優勝争いの先頭に立っていることは変わらない。「まだあるんで、残り2日」と14日目の阿炎戦へ気合を入れ直した。【平山連】