西前頭2枚目の朝乃山(29=高砂)が、初優勝に向けて単独トップの前頭熱海富士を破って大関経験者の意地を見せた。
負ければ熱海富士の優勝が決まる注目の一番に勝って9勝6敗。平幕優勝の壁になることを期待されて組まれた取組で、21歳の新鋭の、本割での悲願達成を阻んだ格好となった。流れを失った熱海富士は、優勝決定戦でも大関貴景勝に敗れて初優勝を逃した。
右の相四つの相手に、立ち合いから圧倒した。圧力をかけながら右を差し、左上手こそ取れなかったが、一気に寄り切った。熱海富士戦が組まれたことは前夜、スマートフォンで確認したといい「千秋楽だし、当たったからには思い切っていった。負けられない気持ちだった」と、気持ちを高めて臨んだ。ただ、その中でも「お互いに大一番。ああいう歓声の中で相撲を取れることに喜び、感謝して土俵に立った」と、相手よりも気持ちに余裕があった。
前日14日目は、同じ大関経験者の正代に完敗した。立ち合いすぐに、もろ差しを許し、見せ場なく寄り切られた。取組後は「(立ち合いの)踏み込み負け。今日(14日目)みたいな、ふがいない相撲で終わりたくない。明日(千秋楽)、もう1度、切り替えて、白星で終わりたい」と、この日の雪辱を誓っていた。
14日目までに関脇3人全員の勝ち越しが決まり、そろって関脇以上にとどまることが確実だった。逆に小結2人は、14日目に東の錦木が9敗目、西の翔猿が8敗目を喫し、そろって来場所は平幕に陥落することが確実。東前頭筆頭で勝ち越しを決めていた、北勝富士の三役復帰も濃厚で、残り1枠を朝乃山よりも半枚上、東前頭2枚目で同じく8勝の阿炎と争う展開だった。だが阿炎が勝ったことで、同じ9勝で並び、来場所の三役返り咲きは厳しい状況となった。