ニューヨークのブルックリンに極真会館の道場があった。師範は中村忠、キックボクシングの沢村忠の名付け親で温厚な立派な空手家であられた。1969年、その道場で私は柔道を教えた関係で中村師範にお世話になった。

当時、米国のテレビは男性化粧品のCMに「ハイ、カラテ!」と言って大山倍達総裁が出演されていた。その大山先生が、英国留学中の娘さんに会う際、よくニューヨークの道場に来られた。堂々とされていて圧倒されたものだ。

大山先生が鬼籍に入られた後、幾つかに極真会館が分かれた。緑健児代表の新極真会は、日本レスリング協会の格闘競技連盟に加入して、日本オリンピック委員会(JOC)とも関係を持つようになった。それで、2012年7月の「カラテドリームカップ2012国際大会」に、緑健児代表は「すべての極真会派の皆さまへ」という出場要請のための声明文を出した。で、4派の道場からの申し込みがあった。

悲願である五輪種目に空手を入れるという強い願望をもつ緑健児代表、私は何回も話をさせていただいた。「空手界の統一が重要である」ことが明白だっただけに、結局、極真会派系の団体は統一せずに終わった。

嘉納治五郎は、柔術各派を統一して「柔道」を創設したのは有名だが、水術(水泳)にも多くの流派があったが再編したことは知られていない。空手界が真に統一されれば、最大の競技人口を誇る格闘技となったのに、残念ながら統一、再編する人物が出現しなかった。

茶道、華道をはじめ、我が国には多くの文化の中に流派が存在する。詳細についての知識は私にはないが、統一した組織にはならない。一言で表現すれば、「利権」のためだ。

大山倍達総裁が、ご存命であれば東京五輪の空手のために、どのような判断をされただろうか。興味深く総裁をしのぶ。雑誌「パワー空手」で、私は大山総裁と対談させていただいたが、その直後、急逝された。「牛殺しの大山」の名は、米国では日本以上だった。空手普及の偉大な指導者であられた。