ハワイで長期滞在することがあった。生活費が高くつくので、毎日、ドン・キホーテに通って食材を手にした。すしをはじめ、日本食がそろっているため重宝した。何でも買えるスーパーマーケットだった。オアフ島内に4店舗あり、日系人のオアシスとなっていた。

そのドン・キホーテが、私費による外国人留学生のうち、学部にかかわらずスポーツ技能の向上に励み、日々鍛錬している大学生を対象に奨学金を給付している。ドン・キホーテのメセナ活動であるが、この種の奨学金は他に類をみない。さすがに個性的な会社である。

「公益財団法人・安田奨学財団」が、一般の奨学生とは別にスポーツ枠を設けて、スポーツ留学生を応援しているのだ。安田と名がつくのは、創業者の安田隆夫氏が寄付して財団を作ったからである。募集要項を読むと、ドン・キホーテのこの財団は、金は出すが、留学生の自由をまったく縛らない純然たる奨学金で、毎月10万円の支給だ。

米国でも日本でも、大学がスポーツ選手のための奨学金制度を設けている。入学金、授業料、実習費等を免除するのが一般的。そこへ食費、寮費を免除した上で、毎月の小遣いを支給する大学も散見する。新興勢力の大学は、そうして一流選手をスカウトする。

安田奨学財団のごとく、国際交流を通じて相互理解をスポーツ選手たちに推進させるアイデアは、他になかった。私たちのように、スポーツ留学生を迎える立場にある関係者は、その慧眼(けいがん)に敬意を表するばかりだ。ただ、応募のハードルは高い。

きちんと日本語で作文を書くことができなければならない。面接も重視されるばかりか、選手として活躍できるかどうかの審査もある。4年前、これらの試験に合格して、めでたく奨学生に選考された日体大相撲部のデルゲルバヤル君は昨年11月、学生横綱の座に就いた。

安田奨学金のおかげである。斎藤一雄監督と私は、学生横綱を連れてお礼のあいさつに伺った。光栄なことに喜んでいただけた。