脱サラサッカー選手が史上最大の下克上を目指す。榊原俊さん(31)がサッカーを始めたのは9歳の時。「サッカーなしの生活が考えられない」と大学まで継続した。大学卒業後は大手自動車メーカーの研究職として自動車エンジンの開発に従事。絵に描いたようなエリートサラリーマンとしての日常だった。

一昨年、「プロサッカー選手になりたい」という心に秘めていた思いが爆発した。会社を退職し、プロを目指すためのトレーニングをスタートさせた。1年の準備期間を経て榊原さんが活動拠点に選んだのは、日本から1万9000キロ離れたウルグアイの地だった。

昼は砂浜での基礎トレーニング、夜は動画を使ってのイメージトレーニングと語学学習に明け暮れた。プロチームのセレクション情報があれば、どこへでも駆けつけた。そんな努力をあざ笑うかのように新型コロナウイルスが南米でも猛威を振るい始めた。「ここまでか。家族に会いたい。日本に帰りたい」。家族への思い、自分の夢について自問自答を繰り返す日々が続いた。榊原さんが出した答えは挑戦の継続だった。「サッカー界が止まっているうちに成長できる。逆に今がチャンス」と、より険しい道を選びチャンスを待った。

9月上旬、3部チームから選手としての内定案内が届いた。「まだスタートライン。ようやくステップアップして恩返しできるチャンスをもらえた。みんなのおかげ」と話した。

最終的な目標は“夢を与えられる人”ウルグアイ文化に触れて感じた新たな伸びしろを後世に残していきたいと考えている。エンジニアからサッカー選手へ。エンジン全開で走りだす。

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