AKB48藤田奈那(18)が、決勝戦で中西智代梨(20)を破って初優勝した。ともに選抜メンバー入りの経験がなく、AKB48選抜総選挙でもランクインしたことのない2人。過去、最も地味な決勝戦だった。藤田は優勝の報奨としてCDのソロデビューする。

 初戦(2回戦)からグーで勝ち上がってきた。決勝も6回グーを出し続けた。そして7回目。「(中西)智代梨ちゃんが絶対変えない感じだったので、ここまで来たらパーを出そうと。ソロデビューのチャンスをつかもうと思うまでに、6回のあいこの時間が必要でした」。勝利の瞬間、大歓声で祝福され、うずくまって涙した。「大変なことをしてしまいました。CD買ってください。大丈夫ですかね。でも5年間やってきて、せっかくつかんだチャンスなので、全力で頑張ります」。

 選抜常連メンバーが早々と姿を消し、ベスト16には総選挙圏外の顔ぶれが並んだ。過去にない展開に会場は異様な空気に包まれた。決勝の舞台で、中西と見合った藤田は「やばいね。私たち、ここにいるべき人じゃない。どっちが勝っても本当に(この舞台が)私たちじゃないよね?」。中西も「そう、ここにいるのは私たちじゃないよ。場違いな感じです。ましてやこんな格好で」と応じた。ともにCD選抜入りはおろか、選抜総選挙も過去5回全て圏外。2人にとって、恐縮してしまうほどの大舞台だった。

 じゃんけん大会は、第1回こそ、選抜経験のなかった内田真由美(21)が優勝したが、その後は篠田麻里子、島崎遥香、松井珠理奈と選抜常連が制した。「台本があるのでは」と疑う声もあった。かつてない地味な決勝戦になったが、総監督の高橋みなみ(24)は「最後2人になった時、どっちも勝てと思った。久しぶりに震えたね」と言った後に叫んだ。「八百長じゃねーぞ!」。藤田も苦笑するしかなかった。

 藤田とは10期生で同期の加藤玲奈(18)入山杏奈(19)らは泣きながら抱き合った。次期総監督の横山由依(22)は「劇場が本当に大好きと言っていた。チャンスを自分でつかんだ。かっこいい」とねぎらった。

 決して目立った存在ではなかったが、一夜で夢をつかんだ。「まさか優勝するとは思ってなかった。ずっと目立てなくても劇場が大好きで、AKB48の良さを少しでも伝えていけるように、全力で必死に頑張ります」。そして「ダンスで魅せられる曲を歌ってみたいです」と控えめな藤田が、少しだけおねだりした。

 ◆藤田奈那(ふじた・なな)1996年(平8)12月28日、東京都生まれ。小1からバレエを経験。10年3月、AKB48の10期生オーディションに合格。選抜総選挙はランクイン経験なし。現在チームK所属。愛称「なぁな」。162センチ。血液型A。