AKB48のメンバーとして10年間活動した田名部生来(24)が、6月26日、東京・秋葉原のAKB48劇場で卒業公演を行い、グループを卒業した。(握手会は今月23日まで)

 アイドルだが、いい意味でアイドルらしくないアイドルだった。柏木由紀、渡辺麻友らと同じAKB48の3期生。王道アイドルの同期を横目に、決してシングルの選抜メンバーになることはなかったが、地道に劇場公演を支え続けるとともに、アニメ、相撲好きなど、個性的なキャラクターをいかして、各所のイベントに出演するなど、独自路線をいく、言うならば「NGのないアイドル」だった。

 例えば、「アイドルとお酒」はなかなか結びつかず、どちらかというとNGな案件も多い中、大のお酒好きの彼女の場合は「OK」だった。昨年のじゃんけん大会で優勝した際も、その格好は、頭にネクタイを巻いた「飲んだくれたサラリーマン」。月刊AKB48グループ新聞の企画で、優勝記念にビールかけをしたが「全然OKです」と、むしろノリノリで快諾してくれた。それはほんの一例で、こちらの身勝手なリクエストにも、必ず応えてくれる存在だった。

 卒業公演でも、胸を張って言った。

 田名部 アイドルをやって11年目になります。ずっと、何年も真面目に突っ走ってきました。時にはおかしいことをしたりしたんですけども、絶対私のファンの皆さんはばかにせず、ついてきてくれました。最初はアイドルらしくないとか、アイドルらしいことをやらないのがかっこいいかもしれないみたいな、なんかちょっと自分でとがってた時代もあったんですけども、今はアイドルやってる自分がとっても気持ちいいです。麻友とかゆきりんみたいになることはできなかったんですけど、AKBという名前を、悪く言ったら利用というか、いろいろと使わせていただいて、1番楽しんだメンバーだと自分で思っています。

 根底にあるのは「とにかく、人に求められることに応えたいんです」という思い。選抜メンバーが握手会でファンと触れ合う中、1人地方に行って、イベント出演を行う日々もあった。それでも、そこから何かを見いだしたいと、必死に取り組んで、14年には総選挙で初ランクイン(71位)を果たし、昨年はじゃんけん大会で優勝したりと、運も味方につけた。

 卒業後は、AKB加入前から志していた女優への道を模索しつつ、シニカルな演技から、コミカルな役どころをこなす「女性版星野源」のような、マルチな活動ができるタレントを目指し芸能活動を続けていく。もしかしたら、さらにお酒キャラが定着して「女性版吉田類」になるかもしれない。いずれにせよ、きっとまた花開くときが来ると、陰ながら見守りたいと思う。