AKB48の東京ドーム公演が26日に最終日を迎え、今日27日にグループから卒業する前田敦子(21)のプレ卒業式といった演出となった。

 新時代のAKB48が、泣きながら、ほほ笑んで船出した。前田を送り出す、初期の名曲「桜の花びらたち」。劇場公演やコンサートで、何度も一緒に歌った曲だ。だが、いつも真ん中にいた前田は、もういない。ゴンドラに乗ってファンに別れを告げていた。

 その背中が遠くなっていく。メンバーの頬を伝う涙。歌は鼻声になった。高橋みなみも大島優子も顔は泣き腫らしてくしゃくしゃだ。それでも笑って送り出そうと、必死に笑顔をつくった。

 前田を照らしたスポットライトが静かに消えた。大きく深呼吸しながら、高橋が最初にマイクを握った。「敦子、いい顔してたね…」。大島が続いた。「悩んで悩んで悩み抜いて自分で決めたっていう顔をしてたね」。前田とともに初期メンバー年少組の1人だった峯岸みなみ(19)が言った。「『あっちゃんがいないAKBはダメになったね』って言われると、私たちもあっちゃんも悲しい。これまで以上に頑張っていこう」。成長した証しを言葉にした。

 決意を証明するように、新星AKB48はアンコールではじけた。「ヘビーローテーション」では、大島が歌い出しのコールを本来の「1、2、3、4」から「1、8、3、1」と変えて元気に踊りだした。新アルバムのタイトルは秋葉原から東京ドームまでの距離(メートル)からあやかった「1830m」。これから前に進む「次の1メートル」を加えた、力強い1歩だった。同曲で前田が立っていた位置にはSKE48松井珠理奈(15)が立った。前田が去った後の「未来形」だった。

 サプライズ発表も、さらなる目標の提示もなかった。東京ドーム公演という夢、前田敦子というエースを同時に失うAKB48。「次の1830メートルに向けて歩き続けたい」と高橋は言った。新しい道を探せ-。AKB48に突きつけられた、新たなテーマになる。【森本隆】