【カンヌ(フランス)18日=木下淳】女優小泉今日子(42)がカンヌデビューした。香川照之(42)との主演映画「トウキョウソナタ」(黒沢清監督、今秋公開)が「ある視点部門」で公式上映を迎え、レッドカーペット、スタンディングオベーションを初体験した。同作は既にフランス配給が決定するなど、世界中に公開が広がる予定。小泉も「機会があれば、お仕事は世界中の誰とでも」と海外進出に前向きな思いを口にした。

 会場のドビュッシー劇場に「月の光」(ドビュッシー)が響き渡るエンディング。その静寂を破ったのは満員の約1000人が織り成すスタンディングオベーションだった。客席中央で見守った小泉は香川や黒沢監督、子役の小柳友、井之脇海と抱き合い、拍手と「ブラボー!」の歓声に全身で応えた。劇場を出ると、真っ先にフランス人から声を掛けられた。「『センシティブ(繊細)でディープな(深みがある)演技だったよ』と言われ、とってもうれしかった」。

 初めて訪れた映画の聖地。小泉は「カンヌって今まで全く関係なかった。参加者の出国、帰国を成田空港でマスコミが追いかけるイメージ」とおどけたが「訪れてみて、街全体から映画に対する熱を感じました。雨でレッドカーペットがビショビショで(競って撮影する)カメラマンも怖かったけど(劇中の)家族で和気あいあいと歩けたので緊張しなかった」と振り返った。

 同作の上映はレオス・カラックスやウォン・カーウァイら大物監督が観賞するなど注目度は高く、既にフランスのARPセレクション社が配給権を獲得した。カンヌ4度目の黒沢監督も「ビックリするくらい観客の反応が良かった」と驚く自信作。日本の配給元ピックスによると、今後、各国との交渉が本格化する。

 海外進出が決まった小泉は今年「グーグーだって猫である」(9月公開)と「トウキョウソナタ」の2作に主演している。国内の活動が充実する中で「もし機会があれば、お仕事は世界中の誰とでも。いろんな作品に挑戦したい」と貪欲(どんよく)な姿勢を見せた。