俳優玉木宏(29)が、クラシック音楽界の“頂点”に立った。映画「のだめカンタービレ

 最終楽章

 前編」(12月19日公開、武内英樹監督)はこのほど、世界3大ホールの1つ、オーストリア・ウィーンの楽友協会で撮影した。このホールは、小沢征爾氏(73)が指揮するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地。1870年の創設以来初の映画撮影が行われ、指揮者役の玉木がタクトを振った。

 世界最高の演奏会場で、180センチの長身が躍動した。指揮者・千秋真一役の玉木は、万感の表情でオーケストラの前に立ち、タクトを振った。「ベートーベン交響曲第7番」の演奏を終えた後、気品に満ちた建造物を見渡し、観客役の現地エキストラに頭を下げた。「立った瞬間に歴史の重みを感じた。役者としてはもう2度と立てない場所だと思うので、緊張感を持ちつつ、楽しんでやりました」と話した。

 同作品は06年10月期にテレビドラマとして実写化。エリート音大生の千秋が落ちこぼれのオーケストラを率いるという内容で、東京近郊の大学やホールがロケ地だった。08年正月の続編スペシャルでフランス留学した千秋は、楽友協会で指揮するまでに成長した。若松央樹(ひろき)プロデューサー(40)は「感動でウルウルした。ドラマを始めたころの思い出がよみがえってきて…」と涙目。武内英樹監督(42)は「今日の指揮は満点。以前は両手がそろっている感じだったけど、今は左手で表現して、楽器に指示を出している」と感心していた。

 昨年冬に楽友協会と交渉を開始。約2年先まで予約が入っていたが、1日だけキャンセルが入り、撮影許可をもらった。同協会の首脳は「映画の撮影は初めて。クラシックを若い世代に広げた作品なので、前向きに対応した」と説明した。歴史的な撮影現場の中心にいた玉木は「多くの音楽家が過ごした場所で撮影ができる。失礼がないように、キチンとしたものを撮りたい」と、今月中旬まで続く欧州ロケにはずみをつけた。【柴田寛人】