東山紀之(43)が再びサムライになる。映画「小川の辺」(篠原哲雄監督、来夏公開)に主演することが1日、分かった。08年「山桜」以来の映画出演は前作同様、藤沢周平作品が原作。前作は高潔な武士らしい凜(りん)としたたたずまいが高く評価された。今回も理不尽な運命を、凜として受け入れる武士を演じられる唯一の俳優として、3年ぶり2度目の藤沢作品に臨む。

 東山が映画出演2作連続で藤沢周平作品に挑戦する。原作の同名小説は「海坂藩大全」(文芸春秋)や「闇の穴」(新潮文庫)に収録。計70万部売り上げ、藤沢作品の名作の1つとうたわれている。物語は主人公の武士が藩命を受け、脱藩して江戸へ逃亡した義弟を討ちに行く道中を描く。

 東山が演じる武士は、妹の夫で剣のライバルを斬(き)らなければならない理不尽な運命を背負う。製作側は「背筋を伸ばして非業の運命を受け入れる主人公を演じられるのは東山さんしかいない」と説明した。

 篠原監督が「男の果たし合いがメーンモチーフになる」と話す通り、本作では10分前後に及ぶ1対1の壮絶な決闘シーンが盛り込まれる。東山は「必殺仕事人」シリーズなど数々の時代劇に出演。殺陣は時代劇を通して、長年けいこを積んできた。本作の殺陣の指導者も「きっちり形ができている。相手との殺陣合わせは必要だが、所作などあらためて特訓する必要はない」と、太鼓判を押すほど確かな腕を持っている。

 日常の厳しいトレーニングから体力面での準備は万全だ。1カ月に約100キロ走り、毎日腹筋を10分間に1000回行う。主演するTBS系連続ドラマ「GM~踊れドクター」の撮了から休む間もなく、9月上旬から本作の撮影に入る東山だが、早くも気持ちを高ぶらせている。「魂を揺さぶられる作品に巡りあえました。岐路に立たされた人はどんな選択を迫られるのか。きずな、葛藤(かっとう)、そして本当の優しさとは何か。藤沢文学はいつも考えさせてくれます。そんな主人公を精いっぱい演じさせていただきます」。

 ロードムービーの要素が強いだけに美しく厳しい日本の原風景を撮るべく、山形を中心に10月上旬まで撮影を行う。女優木村佳乃(34)との結婚がうわさされる東山だが、撮影期間中は休みはほとんどなく、ひたすら剣の道をまい進する。